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コメニウスと『地上の迷宮』
COMENIUS and the LABYRINTH of the World

ジョン・アグバー
by John Agbor

コメニウスの肖像画

コメニウスの肖像画

 ボヘミアとモラヴィアの緑の山々に煙が上がった。かつては平和に満ちていたチェコの地で、麓の町や村々の燃え上がる廃墟に、大砲の咆哮や、死に瀕した男女や子供、動物の叫び声が聞こえた。恐れをなしたスペインの傭兵は、皇帝フェルディナンド二世の名のもとに虐殺を行った。カトリックに改宗しないプロテスタントは、国外へ逃亡するか、さもなければ殺された。こうして30年間続くことになる戦争が始まった。この戦争が終わる1648年までに、中央ヨーロッパは荒れ果ててしまい、ボヘミアのほぼ全域が徹底的に破壊された。およそ300万あったこの国の人口は、無残にも80万人にまで減り、生き残った人々は奴隷となった。

 何と恐ろしい悲劇だ。ヤン・アーモス・コメンスキー(Jan Amos Komensky、1592-1671)は嘆いた。彼はプロテスタントの一派であるモラビア兄弟団のメンバーで、後にコメニウスという名で知られることになる若い牧師で教育者であった。身を潜めて生活している間、コメニウスは当時の世界の状況を検討し、世界が求めていることを見いだした。コメニウス自身もまた、大きな苦しみを味わった。彼の教会は破壊され、貴重な写本は失われ、教会の信徒たちは散り散りになった。最大の悲劇は、コメニウスの妻と2人の子供が、殺戮を逃れた直後に疫病で亡くなったことであった。しかしコメニウスは、激しい怒りと絶望のこの年月に、ある慰めを見いだした。この悲劇の時代に、コメニウスの内面の強さと信念は鍛え上げられ、1623年に書かれた本に反映された。この作品は、神秘的著作の、とりわけチェコ文学の最高傑作となり、『地上の迷宮と心の楽園』(以下『迷宮』と略記。The Labyrinth of the World and the Paradise of the Heart)という題で知られている。

コメニウスの寓話の中の都市を描写した絵

コメニウスの寓話「地上の迷宮と心の楽園」の中の迷路のような都市を描写した絵(http://www.labyrint.cz/en/ より)

 『迷宮』は、この世界において幾世紀も前から課題となっていることを扱った寓話であり、悪や虚栄心が支配するある都市を舞台としている。コメニウスは、彼の愛読書であったサー・トマス・モア(Sir Thomas Moore)の「ユートピア」(Utopia, 1516)や、トマソ・カンパネッラ(Tommaso Campanella)の「太陽の都」(Civitas Solis, 1604)、バラ十字会の「ファーマ・フラテルニタティス」(Fama Fraternitatis, 1612)から様々な要素を取り入れている。物語の主人公ピルグリム(Pilgrim:監修者注:巡礼者もしくは放浪者を意味する)は、『迷宮』の書き出しの一節で、自分の使命について述べている。

 「善と悪の違いを理解し始める年頃になると、私は、人々の地位、環境、職業や、苦労を強いられた時の行いや努力に、どれほどの違いがあるのかを理解しました。そして、どのような人たちの仲間に入るべきなのか、人生では何に力を注ぐべきなのかを考えることが、自分に一番必要なことに思えたのです。」

 〈世界の女王〉たる「知恵」は、〈好奇心〉(Searchall)と〈思い込み〉(Delusion)という名の2人のガイドを送り込み、世界という複雑多岐な迷路でピルグリムを導き、その中にピルグリムが自分の居場所を見いだす手助けをする。

 寓話の舞台は、ある都市である。そこには6つの大通りがあり、職業や立場ごとに人々が暮らしている。夫婦の通り、労働者の通り、学識者の通り、聖職者の通り、為政者の通り、兵士の通りである。それぞれの通りを訪れながら、そこの住民たちの暮らしが、いかに素晴らしく快適であるかを、〈好奇心〉と〈思い込み〉はピルグリムに語る。しかし、我らが主人公ピルグリムには、不潔で、暴力と愚行がはびこる場所にしか見えない。結婚している者は鎖で互いに縛りつけられ、労働者は生活苦と重労働を強いられ、学識者は自分の心を妄想で満たし、聖職者はささいなことで口げんかをし、為政者は顧問たちによって誤りに導かれ、兵士は残酷で血なまぐさい行いに従事している。ピルグリムはバラ十字会員たちを探すが、自分の勘違いによって見つけることができない

 ピルグリムは、平凡な人々が住む都市で幸福を見つけることは無理だと絶望する。しかしそのとき、〈世界の女王〉は、金持ちと偉人の住む〈運命の城〉(Castle of Fortune)に入る特権をピルグリムに与える。その城で、彼は〈運命〉が、自分のお気に入りをどれほど勝手気ままに選ぶのか、そして色欲と暴食の人々が、この城にどれほど多いかを目撃する。次に彼は、〈世界の女王〉が住む〈知恵の宮殿〉に連れて行かれる。ピルグリムは、〈知恵〉の善意に圧倒され、偉大な支配者ソロモンが来て、〈知恵〉を彼の花嫁としてくれることに歓喜する。世界の悪についての真実が明らかとなるが、世慣れている〈知恵〉でさえ、多種多様な問題を解決することはできない。ソロモンは立腹し、〈知恵〉の仮面を剥ぎ取る。すると、〈知恵〉の真の姿、〈虚栄心〉が曝される。しかし、人の中で最も賢明なソロモンでさえ、この世の生活の誘惑によって堕落していく。

 ピルグリムはこの世界から逃れるが、底なしの奈落へと落ちていく。そこで、美しく優しい声が、ピルグリムに向かって呼びかける。「戻りなさい。あなたが着いたところから引き返して、心の中にある家に入りなさい。そして、背後のドアを閉めなさい」。ピルグリムは外部との接触をすべて放棄して、自分の心の最も深いところにある聖域に入るその場所で彼は、真の平安と愛を見いだす

 コメニウスは、主人公ピルグリムに非常に良く似ていた。コメニウスは、多くの問題を抱え恐怖に満ちた世界に、心の平安と啓発を探し求める高潔な人物であった。彼は150以上もの著書と、教育に関するいくつかの論文を書き、この世界に多くの光をもたらした。この教育に関する論文によって、コメニウスはヨーロッパ中で名を知られることとなった。しかしその後も、コメニウスはさまよえる亡命者であり、迫害から逃れることを強いられ、故国に戻ることを禁じられていた。コメニウスは多くを失うことで苦しんだが、心の深い部分に潜む自己である〈内なる師〉(Master Within)との交流を常に求めることによって、このような苦難を耐え抜いた。

 新しい千年紀という、不安の多いこの時代に生きる多くの神秘家にとって、コメニウスの人生は大きな励ましである。また、悩みを抱え、この本を手に取ろうとする人にとって、コメニウスの描いた『迷宮』は、あまりにも不完全なこの世界のあらゆる場所に慰めを与えている。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」(No.129)の記事のひとつです。

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