ステアタイトのコプト十字
バラ十字古代エジプト博物館からの逸品
エジプトのビザンティン時代は大きな変化の時代でした。様々な多くの種類の神秘学と心霊学の諸学派の信奉者たちが一緒に生活し、働き、お祈りをしていました。これらの中にはコプトキリスト教信者たち、伝統的エジプト宗教の信奉者たち、新プラトン主義の哲学者たち、ヘルメス信仰者たち(ヘルメストリスメギストスの著作の信奉者たち)、よくグノーシス派であるとされている様々な多くの団体、そして神秘学派の入門者などがいました。この十字のデザインは特にキリスト教的ではありますが、この文化の多様性を反映しています。
この芸術品は小さいものではありますが、当時のコプト教の僧侶たちが「聖なる礼拝式」や他の儀式の時に、信徒たちを祝福するのに使用していた「手でかざす十字」の代表的な見本です。この古代の十字の基本的デザインは今日でもコプト、エチオピア、エリトリアのキリスト教で使用されている「手でかざす十字」のものによく似ています。十字はキリスト教時代のずっと以前から使用されていたのであり、キリスト教で使用されるようになったのは4世紀頃になってからでした。特に十字架の上にキリストが磔されている写実的な表し方のものは歴史のずっと後日において使用されるようになったのでした。
この芸術品をもっと詳細に調べてみると、その象徴的意味の他の解を得ることができるかもしれません。十字の上部の片面にはエジプトの衣服を纏った人が表されていますが、これはキリスト教観点からは聖母マリア、天使あるいは聖者を表しているのかもしれません。そして他の信教の信者たちには、啓発された賢者なのかもしれせん.反対側には様式化された葉またはわらの装飾の十字があり、取っ手部分の両面の最下部まで続いています。5個の輪と孔が反対の上部の十字と表側の取っ手の下部にありますが、それらはキリストの5つの傷と古代地中海形而上学の5墓礎をあらわしていると考えられます。四大要素と第5元素が十字の両面に配置されていすが、それらは、下のこの現象世界の諸現実が上の霊界におけるのと相当していることを示していました。
取っ手のわらのデザインは、古代エジプトの日常生活で中心的なもとなっていた椰子の葉あるいはナイルの波を思いださせるためなのかもしれません。それはまた王様たちのあごひげを形式化した「ファラオのあごひげ」とも極似しているのです。このパターンはバラ十字公園の歩道にも見ることができます。コプトキリスト教徒たちには、川と水のイメージはヨルダン川でのキリストの洗礼を思い出させるのですが、この洗礼は、アレクサンドリアの伝統に基ずいたキリスト教徒たち全員によって重要なお祭りとして今日でも1月6日に記念されています。椰子の葉はまたイエスが磔の前にエルサレムに入ったことも反映させています。
キリスト教の慣習では、象徴的に飾られた十字の裏側は復活祭の季節の間に復活の後の空の十字架を示すのに使用されています。あるいは、ファラオのあごひげのパターンはキリスト教徒がキリストの王権を示す、またヘルメス信奉者たちが彼または彼女を王道とみなす見解を示すための一つの方法なのかも知れません。確実に、表の面は、彼または彼女の両手が入門者の折りの姿勢になっているので苦痛ではなくむしろ平静を保っているのです。
この小さな宝物についての解釈がどうであれ、我々の博物館のビジターたちと我々をエジプトの長い長い歴史に結びつけてくれます――と言うのは、その中においては文化は死ぬことはなく、むしろ必ず変形されるのだからです。
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Steven A. Armstrong, Ph.D.(Cand)
Research Associate
Rosicrucian Egyptian Museum
バラ十字古代エジプト博物館研究委員
哲学博士スティブン・A.アームストロング
『パラ十字ダイジェスト」誌2002年No.4より
パラ十字古代エジプト博物館は西部アメリカ最大の古代エジプト・バビロニア収集品を所有しています。一般公開されており(会員のみ無料)、毎年25万人以上の参観者があります。