バラ十字会

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神秘学を科学する 第4部

Scientific Mysticism Part 4

ウィリアム・ハンド

By William Hand

第2章 この仮説は、一般的な経験と合致するものになっているでしょうか?

Does The Hypothesis Fit In With Common Experience?

 たったひとつでも、この仮説と合わない例を見つけることができるなら、この仮説は間違っているか、または不完全であるに違いありません。ですから、この質問は科学的に非常に良い質問であり、また不可欠な質問です。それでは、ESPに関してはどんな例があるでしょうか?

 直観や予感について考えてみましょう。私たちには誰にでも、直観や予感があります。直観や予感は一般的なものであり、比較的頻繁に体験することができます。直観を用いて、問題を解決したり、質問に答えたりしようとするときには通常、問題を客観的に思案するのを止めることが必要です。そして、リラックスしていて、たいていは何も考えていないその瞬間に、答えがやってきます。あたかも、どこからともなく浮かんだ完璧な答えのように客観的意識にひらめき、その答えがとにかく正しいということがあなたには分るのです。この現象の一般的で分りやすい説明は、下意識が働いているというものです。これは事実ですが、この説明では、直観や予感の生じるプロセスについて何の説明もしていません。

 私たちの仮説は、いわゆる四次元の時空の外にある次元における「ひも」の相互作用から、直観が生じているというものです。それでは、この相互作用とはどのようなものなのでしょうか? ここで、家を買うのに2軒の選択肢があるという問題を、あなたが抱えていると仮定してみましょう。どちらの家も、同じような価格で、ともに同じような設備があり、同じような場所に建っているので、どちらを購入するかを決めることができません。あなたの趣味のひとつは庭づくりで、さまざまな庭づくりの経験があるとします。花の香りや、木が育っていくのを眺める喜びや、庭で採れた野菜を摘んで食べる感動といった経験です。このような経験のひとつひとつは、脳の中の神経間の接続として記録されるだけではなく、喜びに満ちた思いや表現を含む「ひも」の振動のパターンとしても記録されます。買いたいと思っている家にはどちらにも庭があり、どちらの庭にもあらゆる次元の「ひも」の振動があります。しかし、片方の家には問題があり、土が汚染されてしまっていて、かつては十分に植物が生長する地力があったけれども、今ではその可能性はありません。この庭から起きる「ひも」の振動は、十分に健康な植物や木に良く見られるパターンを、もはや含んではいません。そのため、この庭からの振動は、私たちの心の中から湧きあがる望み、つまり、私たちが求めている「ひも」の振動のパターンと調和しません。したがって、この庭とは、調和の取れたつながりを作ることができません。幸いなことに、もう片方の家の庭はすばらしく、「ひも」どうしの間で起こる相互作用、すなわち情報とエネルギーの交換は、私の願いや、私の植物や、この庭で起こるであろう体験という新しいパターンを作ります。心が静かになっているある瞬間に、この未来像が直観として知覚されて、その家を選択することになります。

 このようなときにはさまざまなことが起こっているのですが、もっとも大事な出発点となるのは、意志の力によって強化された、素敵な庭が欲しいという望みが、下意識にある質問の引き金となっているということです。その質問とは、「『ひも』のパターン同士は調和しているだろうか?」というものです。良く使われる言葉ですが、「何か、しっくりこない」というのは、おそらく、このことに由来するのではないでしょうか? もちろん、土を客観的に分析して、物理的に汚染を見つけることによって、庭を正しく選択することもできたかもしれませんが、しかしそのためには、そうすることをそもそも思いつかなければなりません。通常は、土地を購入する際に、土壌の分析までは行わないでしょう。なぜ土壌を分析してもらうことまで思いつくのでしょうか。直観が働くのでしょうか?! 

 今取り上げた例では、ある問題についての、どちらかといえば静的な「感覚」を考察しました。しかし、最愛の人(loved one)の死や災難を知覚するといった、動的なESPの例はどうでしょうか? このような場合は、どのように私たちの仮説に当てはまるのでしょうか? この場合のカギは「最愛の人」(loved one)という言葉です。私たちには、最も近しい人との特別なきずなが必ずあります。このような愛情に満ちた親密な間柄では、その2人の間に、調和の取れた振動が徐々に蓄積されます。もし、その2人の一方が災難に遭ったり、あるいは本当に死んでしまったなら、調和は乱され、調和していない「ひも」の振動が伝わり始め、そして受信されます。このようなことはそれを受け取った人にショックを与えることがあり得ます。というのも、調和していないその振動は、ほぼ確実に、突然、客観的意識に伝えられ、それによって、何か壊滅的なことが起こったという直観的な認識が生じるからです。こういったことは、距離が極めて離れていても、よく起こります。ひも理論で扱われているまだ観測されていない次元においては、距離や時間の持つ意味は、私たちが普段接している客観的な世界とは違うからです。

 現時点では、次のような批判が生じることでしょう。すべてはうまく行くように思えるが、仮説に合致するように、物事を、単に巧みに処理しているだけではないかという指摘です。これは説得力のある意見ですが、今回の記事の目的は、私たちの仮説で、ESPの、いくつかの事例を説明するのが可能であるかを確認することです。そうすることができていないなら、仮説は修正される必要があるでしょう。明らかに、ESPに関して起こりうる現象のすべてを見てきたわけではありませんが、通常の五感以外の手段で知覚を行う一般的なプロセスについて考察してきました。最初に私が書いたように、ここで提供されている説明は、完全に間違ったものかもしれません。というのは、現在のところ、ESPが生じるときに進行しているプロセスについて、実証可能な証拠を持ち合わせいないからです。別のもっと良い説明があるのかもしれません。そして、現在のところ、理論物理学と実験物理学がさらに進歩するのを待たなければなりません。そのような進歩によって、私たちの仮説を、よりしっかりした基礎のもとに構築することができるかもしれませんし、また、重大な疑問を投げかけられるようになるかもしれません。このどちらになるかは、時間だけが知っています。

 しかし、明らかなことですが、ESPの働きについての理論が信頼できるものであるためには、遠くの事物を知覚する現象を説明し、同時に、日常的な五感以外の手段によって近くの事物を知覚する現象を説明しなければなりません。おそらく、さらに物議をかもす話題でしょうが、ESPには、たとえば夢で未来の光景を見るなど、予言的な要素が含まれていると仮定するならば、その理論では、世界を記述する物理方程式から、時間という要素を取り除かなければならなくなります。私たちの現在の仮説では、まだ観測されていない次元における「ひも」の相互作用を考えることによって、時間の要素が取り除かれています。

 次回の第5部では、意識という非常に難しい話題に取り組んでいきます。意識とはいったい何なのでしょうか。そして、いくつかの異なったタイプの意識があるのはなぜなのでしょうか。それらの意識の間には関連があるのでしょうか。なぜ意識は、単独で、すべての現実の背後にある、最も基本的な力になっているのでしょうか。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。