バラ十字会

非宗教・非営利団体であるバラ十字会は、
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太陽の扉の向こう側に立つ赤い男
〜バラ十字の錬金術の寓話〜

The Red Man Behind the Door of the Sun
A Rosicrucian Alchemical Allegory

アルベルト・I.ラ・カーバ、PhD
by Alberto I. La Cava, PhD
錬金術の挿絵:ドリス・ロルカ、S.R.C.
Alchemical Figures by Doris Lorca, SRC

 錬金術の寓話は、作者がいくつかの目的を心に抱きながら創作し、それを、比喩的な表現を用いて書き上げた物語です。しかし、そうした目的や深いレベルの意味が理解されず、何も語らない文章になってしまうことがよくあります。用意のない読者は、寓話に用いられる不可解な表現に落胆してしまって、その意味を理解しようという気持ちをなくしてしまったり、まるで意味不明な文章だとか、難解すぎて理解することも解釈をすることもできないと思うことになりかねません。

 その一方で、寓話に、えも言われぬ魅惑的な力を感じる精神もあります。それは、言葉に隠されている意味を解き明かして理解するための時間と労力を惜しまない、神秘家の精神です。過去の時代の神秘家が、文学的な表現の背後に隠された意味について、時間をかけて調べ、手がかりをひとつずつ追い、思索と瞑想を重ねてきたことを、教本の学習を通じて私たちは知っています。ヘルメス錬金術は、「磁石」にたとえられることがあります。その魅力が、神秘学の知識と啓発の光を求める者を惹きつけて放さないからです。

ジギスムント・バクストローム 医学博士、FRC
Dr Sigismund Bacstrom, MD, FRC

 少し前の話になりますが、ジギスムント・バクストローム博士の直筆のノートを調べていて、私は一編の魅力的な寓話に偶然出くわしました。彼はバラ十字哲学の研究者であり神秘家であり、18世紀後半にイギリスで活動していました。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

 神秘哲学やバラ十字会の活動の歴史を研究している人たちに、バクストローム博士の経歴は良く知られています。アーサー・ウェイト氏やアダム・マクリーン氏が、彼に関する報告書をまとめています(脚注1)。
彼はスカンジナビア人を祖先に持ち、医学で博士号を取得した後、船医として世界中を旅して回りました。いつものように航海の途上にあった彼は、モーリシャス島(当時フランス領)でシャザール伯爵(Comte de Chazal)と出会いました。そして1794年9月12日に、博士は当地のバラ十字会の支部に入会しました。バクストローム博士の門弟たちが後に語ったことによれば、シャザール伯爵がバラ十字会へ入門するための儀式を受けたのは、かの有名なサン・ジェルマン伯爵によって創設されたフランス支部であったと伝えられています。
シャザール伯爵は、バラ十字会の伝統に従って、バクストローム博士のために入門儀式を行い、入会証明書を授与しました。この証明書の写しが残っており、E.アーサー・ウェイト氏の著書に全文が収録されています(脚注2)。
バクストローム博士はロンドンに居を定めると、神秘学を志す門弟を周囲に集め、バラ十字と錬金術の思想について指導をしました。それらの知識は彼がシャザール伯爵から受け取ったものです(脚注3)。また彼は、門弟たちに囲まれて過ごした数年間に、彼らが回し読みしていた、膨大な数に上る錬金術の文書を翻訳したり編纂したりしました。

 バクストローム博士と彼の門弟たちが行っていた神秘思想の研究には、錬金術特有の専門用語や、象徴による表現についての知識が大いに必要とされました。バクストローム博士は、それらの知識をシャザール伯爵から学んだのだと思われます。彼は、哲学と錬金術に造詣の深い古典学者であり、ラテン語やヘブライ語、ドイツ語やフランス語で書かれた錬金術や神秘学の文献の数々を、英語に翻訳したり注釈を加えたりして、後世に多大な貢献をしました。彼の直筆のノートは、今でも個人収集家が保存していたり、イギリスやヨーロッパ大陸にある特殊な図書館の収蔵品として保管されています。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

「そして、そこには赤い男がいる」

太陽の扉の向こう側に立つ赤い男の寓話
The Allegory of the Red Man Behind the Solar Door

 私が手にした直筆のノートには、バクストローム博士が1805年の3月から4月にかけて書き留めた研究用のメモが残されていました(脚注4)。これは研究用のノートであり、現代の秘伝思想の研究者が、備忘録や個人的な見解を書き留めておくために用いている雑記帳のようなものです。この特別なノートには、ヨーロッパの錬金術と神秘学の愛好家たちが個人的に収集した文書を、隅から隅までたどった“旅”の経緯が書かれていました。そして、その最後に扱われていたのは、イギリスの美術商ドュヴィーン氏(Denis Duveen)の所蔵していた文献でした。

 アメリカの財閥であったメロン家がドュヴィーン氏の所蔵品をすべて買い上げたため、20世紀のある時点で、このコレクションはアメリカに渡りました。心理学者のカール・グスタフ・ユングは、錬金術の絵画や著作物に対する象徴主義的な解釈と心理学的な解釈を行いました。メロン家の人々はユングの思想に深い興味を抱き、多大な努力を傾けて、古代の錬金術や神秘学に関する原稿や写本の一大収集をなし遂げました。それは「メロン・コレクション」として現代でもよく知られており、イエール大学の図書館の地下の重要文書保管庫に預けられています。私がバクストローム博士の手書きのノートを手に取って調べたのも、この場所でした。
バクストローム博士のノートの15ページには、以下のような、大変興味深い錬金術の寓話が書かれています。作者はハドリアヌス・ア・マインジヒト(Hadrianus a Mynsicht)という、中世の医師であった人です(脚注5)。

「ハドリアヌス・ア・マインジヒトが、友人のハートマン博士に宛てた手紙」
(ラテン語原文をバクストロームが英訳)

親愛なる博士へ

 つい先日のことですが、暮れの時分に、センディボギウス(Sendivogius)の哲学的な一節が、ふと心に浮かびました。「それを、風が胎内に孕みつつ運んできた……」
「それゆえに、我が敬愛する友の声を聴き、その声に学びたまえ。あそこにある宇宙の中心を手に入れたまえ。それは間違いなく、北方の使者によって、海洋が汝に与えるものだ。そして汝は〈水星の鍵〉(Mercurial Key)を手にすることになる。」
「さあ、太陽の扉を開き、中に入りたまえ。そこには赤い男がいる。三角形のついた十字を右手に乗せ、左手には真横に細い線の通った〈地球の眼〉を乗せている。」
「動かずにじっと立ち、我が言葉を信じたまえ。この2つは、我が〈秘密の黄金の羊毛の象徴〉なのだ。それを秘密の球体の中に入れると、日食が始まり、とりどりの色と段階を経て、〈天上の永遠なる夜明け〉が生じる。」
「しかし、誰もがコリントに辿り着くことを許されているわけではない。だが、汝がうまくやりおおせて幸せになることを我は確信している。」
ハドリアヌス・ア・マインジヒト、医師

この寓話についての神秘学的な瞑想
The Mystical Meditation on the Allegory

 宇宙の真の神秘を得る方法は、神聖な啓示以外にはないと神秘家は確信していたため、難解な比喩に隠された深遠な意味を説き明かすには、学術研究や知性や理性だけでは不十分であることを承知していました。神秘家は、瞑想の価値を知り、理解していました。瞑想は、宇宙からのインスピレーションや啓示や指導が受けられるように、心の扉を開いてくれるからです。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

「この2つは、我が秘密の黄金の羊毛の象徴なのだ」

 神秘家たちはまた、沈思黙考という方法を知っていて、幾世紀にもわたってこの方法を実践し、また、象徴的に表された寓話について瞑想を行ってきました。寓話を理解するためのインスピレーションと啓発の光を得るために、バクストローム博士が用いた技法の興味深い一例を、博士のノートから知ることができます。この寓話を英語に翻訳した後も、彼には、その最深部に潜む謎を解明するという課題が残されていました。
「この厄介なテーマに対する答えがひらめいたのは、1805年2月初旬のある晩、家に一人でおり、熱心に神への祈りを捧げた後のことであった。私はすぐさま紙に書き留めた。なぜなら、そのひらめきは、偉大なる〈瞬間〉から生じたものであると確信したからであり、今でもそう確信している。」

 バクストローム博士は、まず祈りと瞑想に時間を割き、その後に寓話の意味に関する啓発の光を得ました。それから、そのことを直ちに書き留めたのです。

寓話の分析
Understanding the Allegory

 言うまでもありませんが、この寓話にはいくつかの解釈があります。この話に込められている意味は、実験室で行われる錬金術の手順であり、同時に「内面的な自己の変容」の過程でもあります。そして、この自己の変容は、錬金術師が神秘学の実践を行うことでなし遂げられます。バクストローム博士のノートに見られる寓話の解説は、極めて入り組んだものであり、錬金術の実験を行う人々が用いる専門用語がふんだんに登場します。しかし、寓話で用いられている象徴に関して、これから行う解説は、分かりやすいものに仕上げました。この文章の主眼は、ハドリアヌス・ア・マインジヒトが用いたイメージの豊かさを読者の皆様にご紹介し、初歩的な部分だけでもご理解していただくことにあります。

 「それを、風が胎内に孕みつつ運んできた……」。この部分は、バクストローム博士によれば、〈原初の物質〉を“液化する”必要性を示しています。つまり、目に見えないものを、より物質的な、したがって感覚でとらえやすいものに変える必要性を述べています。「エメラルド・タブレット」には、〈原初の物質〉は風の胎内に包まれて運ばれると書かれています。この〈原初の物質〉とはヌースのエネルギーの一部であり、空気中に存在しています。それは「空気を、活力ある空気」にします。さらに、「これがなければ、あなたにできることは何ひとつない」とも書かれています。それゆえに、この部分で述べられているのは、上位のものと下位のものとの錬金術的結婚なのです。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

「それを秘密の球体の中に入れると……」

 「あそこにある宇宙の中心を手に入れたまえ。それは間違いなく、北方の使者によって、海洋が汝に与えるものだ。そして汝は〈水星の鍵〉を手にすることになる」。「宇宙の中心」のことを、バクストローム博士は錬金術の〈塩〉であると解釈しています。この〈塩〉とは、結晶化した宇宙の母体、すなわち物質からなる宇宙の母体のことを意味しています。この母体は、その本質として、秩序と構造を運んでいます。「海洋」という語は、隠された意味として塩のことを示しています。塩は海に豊富に含まれているからです。

 「海洋」という言葉から想起される別の象徴としては、錬金術師が内面世界を巡り、自身の心の奥に潜む様々な怪物と出会い、戦いを繰り広げる神秘的な旅(the journey of the Argo:アルゴー船の冒険)が連想されます。しかし塩は、水に溶けても存続しています。塩は、固体の物質を創造する土の象徴であり、錬金術師の肉体の象徴であり、さらには、無意識が、より高いレベルの意識へと固体化することの象徴でもあります。

 「北方の使者」の部分は、バクストローム博士を当惑させています。しかし、北から南へと流れる地磁気に関係すると博士は推測しています。別の解釈としては、春に太陽が北天の白羊宮(牡羊座)、金牛宮(牡牛座)、双子宮(双子座)を通過する時期に、錬金術の作用が最高潮に達するという意味であるのかもしれません。この時期は、バラ十字会の新年に当たる時期でもあります。錬金術師であったセンディボギウスは、この点について、比喩を用いて次のように表現しています。「野原で戯れる雄羊の群れと雄牛の群れと、さらに2人の童子を目にしたら」。(これは、白羊宮と金牛宮と双子宮を太陽が通過する春を意味しています。)春は、自然が復活と再生を遂げる季節です。同時に、自然界の復活と再生の過程を、錬金術師自身も通過するという意味も含まれています。

 「水星の鍵」とは海塩の言い換えです。海塩には「天然の硫黄」が含まれています。硫黄の象徴は鍵の型をしています。

 「さあ、太陽の扉を開き…」ですが、「太陽の扉」は、様々なレベルの意味が考えられる象徴表現です。一例を挙げると、錬金術師は、黄金を作る手順で、純金(Sol:ローマの太陽神であり純金の象徴)の箔を“酵素”として使っていたことを考慮すると、「太陽の扉を開き」とは、黄金を創造する過程をスタートさせるために、少量の金を使うことを意味していると考えることもできます。また別の解釈としては、「太陽の扉」とは単に硫黄を指しているとも考えられます。錬金術師たちの間では、硫黄は「太陽に通ずる道」と呼ばれ、〈哲学者の金〉を創り出し、増やす上で必要となる基本的な材料でした。

 より高位の、神秘哲学のレベルから見れば、「扉」とは、光と啓示の世界への入り口、接近方法、入場許可を表します。自分自身の“内面”において、〈偉大なる作業〉を構成する錬金術の要素を、私たちひとりひとりが見定めるためには、「扉」を通過して啓示を得ることが必要です。そして、啓示によって理解される錬金術の要素が、赤い男の姿を通して象徴的に描かれています。以下にご説明しましょう。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

「とりどりの色と段階を経ながら……」

 「中に入りたまえ。そこには赤い男がいる」。バクストローム博士は、「赤い男」とは赤色硫肝(red hepar sulphur)、すなわち暗い赤色をした硫黄の化合物のことだと解釈しました。錬金術に欠かせない硫黄は、多くの場合、赤色で表されます。神秘学の立場から見ると、硫黄は、私たちが感情を持つ存在であることを表しています。そのため私たちには、燃えさかるような力とエネルギーがあります。そして、感情にあるエネルギーを適切にコントロールするためには、錬金術の過程を経ることが必要です。このことは、赤い男が「三角形のついた十字を右手に載せて」いることから明らかです。この部分は、表面的には、硫黄を表す記号について述べていますが、同時に、私たちにある激しやすい感情的な性質を暗示しています。

 左手に乗った「地球の眼」、「真横に細い線の通った」円は、どちらも塩を象徴する記号です。この塩は、私たちの、さらに物質的な要素、怠惰、変化に抵抗する性質の象徴です。私たちの固定的観念と言っても良いでしょう。

 つまり「赤い男」は、正反対の要素を、それぞれの手に持っていることになります。右手で運んでいるのは硫黄であり、活動と積極性という一面を示し、左手で運んでいるのは塩であり、固定化された消極性という逆の一面を示しています。「赤い男」自身は、この両方の極端を仲裁する存在です。彼は、硫黄と塩とともに、この変容に必要な主な成分を表しています。

 「動かずにじっと立ち、我が言葉を信じたまえ……」という部分は、イアーソーンと、彼の率いるアルゴナイタイ(アルゴー船の乗組員たち)が金の羊毛を求めて航海の旅をするという伝説を指しています。金の羊毛は「賢者の石」(Philosopher's Stone:哲学者の石)の調合を意味する象徴でした。アルゴナイタイの神話は比喩表現をふんだんに駆使した神秘的冒険譚であることに留意してください。不寝番の竜との対決をはじめ、錬金術師たちが、自身の作業を行う様子を描写する際に使うイメージとよく似た象徴表現が数多く含まれています。

 「それを秘密の球体の中に入れると…」の部分の「秘密の球体」とは、錬金術で使うランビキ、つまり蒸留器のことを指しています。その中では、様々な成分(赤い男と硫黄と塩)が炉の炎で熱せられて反応します。神秘学的に見ると、「秘密の球体」は錬金術師の肉体と精神を意味していて、そこで、真の変成が起こります。

ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図

「日食が始まり……」

 「日食が始まり…」は、蒸留器の中で今まさに変成が起こっている様子を描写したものです。錬金術師によれば、蒸留器の中の成分は、熱すると黒色になります。物質の黒色化とは、神秘学的に言えば「ニグレド」(Nigredo)という暗闇に包まれた段階を表します。バラ十字会員の皆さんには、「ソウル(魂)の暗黒の夜」(Dark Night of the Soul)と呼んだ方が馴染み深いことでしょう。この段階で錬金術師の意識は、夜によって象徴される苦しみと絶望を味わいます。

 「そして、とりどりの色と段階を経て……」。この段階は「孔雀の尾」(Cauda Pavonis)と呼ばれ、蒸留器の中の物質が、次から次へと目を見張るような色彩の変化を見せます。こうした色の変化は、神秘学を学ぶ者の、内面と外面での変容と、人生における経験と変化を表します。これらは、さらなる成長と精神の深奥の進歩を伴います。

 「天上の永遠なる夜明けが生じる」。この段階では、蒸留器に入っている物質が、白色に変わって行きます(アルベド段階)。神秘家は光と宇宙的啓示を達成し、再生を体験し、栄光に輝く身体を得ます。この時点で、神秘家は「賢者の石」を手に入れます。

 「誰もがコリントに辿り着くことを許されているわけではない」。ここでは、再びアルゴナイタイの神話に触れて、「偉大なる作業」が完成したことを象徴的に語っています。アルゴー船の冒険は、金の羊毛を手に入れた後も続き、いくつかの危険をくぐり抜け、最後にコリントへとたどり着きます。そして、船長のイアーソーンはその地の王となります。古代のコリントは、莫大な富を抱えた国と考えられていたという点に留意してください。そのため一部の錬金術師によって、卑金属を黄金に変える変成作業の最後の段階の象徴にされたのだと思われます。この寓話では、錬金術の手順(アルゴー船の冒険)を始めた錬金術師の誰もが〈偉大なる作業〉の最終目的にたどり着けるとは限らないと語られています。この神秘的な象徴表現は、神秘学の道の途上にある探究者のすべてが、最高のレベルの宇宙的啓示を達成するわけではないということを示唆しています。

 「だが、汝がうまくやりおおせて幸せになることを我は確信している」。この箇所には、この錬金術師(ハドリアヌス・ア・マインジヒト)が弟子に置いている信頼が示されています。たとえ〈偉大なる作業〉をなし遂げられなくとも、彼の弟子は、成功と幸せに満ちた生涯を享受することが許されるのでしょう。それは、誠実でひたむきな態度で〈探究〉に挑んだことへの、宇宙からのご褒美なのです。

こうして赤い男は自らの教えを締めくくる
And the Red Man Has Completed his Teaching

 「太陽の扉の向こう側に立つ赤い男」は、変成の神秘を調べる錬金術師の探求の物語として描かれていますが、同時に、宇宙意識と啓示を追求する神秘家の姿を象徴的に描いた話でもあります。宇宙意識と啓示は、まさに「賢者の黄金」であり「哲学者の石」なのです。筆者である私の意図は、錬金術と神秘学の双方の視点から、象徴の意味についての解説を皆さんにご紹介することにありました。この寓話から学び取れることはまだまだあります。その手段は、錬金術の伝統に従えば、瞑想をすることに他なりません。

 この記事も終わりに近づきました。ハドリアヌス・ア・マインジヒトが執筆し、バクストローム博士が翻訳と解説をいくつか加えた短い手紙の最後に、私たちはたどり着きました。「太陽の扉の向こう側に立つ赤い男」はハドリアヌス・ア・マインジヒトの教えを伝え、200年近く前にバクストローム博士のノートに書き記されたわけですが、それ以降、出版されることもなく、貴重本保管室に眠ったままでした。しかし、バクストローム博士の精神は今でも生きており、理解したいという彼の飽くなき探究心を通して、眠りは打ち破られ、活字というきっかけがなくても、新たな探究がひとりでに起こります。バクストローム博士も過去の神秘家と同様に、自らの探究を手本として示すことで、教え子たちに学ぶ意欲を与え続ける一人なのです。

 そしてこのことは、目に見えない一本の黄金の糸にたとえることができます。この糸は有史以前から私たちとともにあり、時間と空間という限界を超えて、私たちと過去の神秘家は、同じ〈探究〉のために力を合わせることになります。そして、この糸はまた、私たち全員を、目では見ることのできない〈バラ十字〉に結びつけてくれています。

脚注

脚注

1. E.アーサー・ウェイト著『バラ十字同胞団』の第20章。ユニバーシティ・ブックス刊(ニューヨークハイドパーク/出版年不詳)。アダム・マクリーン著『バクストローム博士のバラ十字の集団』、「ヘルメティック・ジャーナル」の6~25ページ(1980年刊)「ヘルメティック・ジャーナル」は以下の宛先にて入手可能。“PO Box 375 Headinton, Oxford OX3 5RPW, England”
2. E.アーサー・ウェイト著『バラ十字の歴史の真相』(P.409-414所収)、George Redway刊(ロンドン/1887年)。Steiner Books, Blauvelt, NY 10913, USAにより1982年に再販。
3. バクストローム博士が、弟子の研究者に出した入会証明書は、彼がシャザール伯爵から受け取った証明書に類似している。このうちの一通が発見されており、近年アダム・マクリーン氏によって公表されている(脚注1の文献を参照)。
4. メロン写本、No.141「バクストローム氏の錬金術学術集」(イエール大学稀覯書図書館所蔵)
5. ハドリアヌス・ア・マインジヒト(Hadrianus a Mynsicht、1590-1638)は、パラケルススを信奉する医師であった。また彼は、錬金術の熱心な研究者であり、自分自身をバラ十字会員であると考えていた。彼は、重要な執筆の際にはいくつかの筆名を使っていたが、そのうちのひとつが“Hinricus Madathanus Theosophus”という筆名である。この名前は『16世紀と17世紀のバラ十字会の秘密の象徴』の中のひとつの論文の著者名にあたる。『黄金時代における再生』(Aureum Seculum Redivivum)と題されたこの論文には、高度な比喩の手法が駆使されている。この文章で彼は、“Harmannus Datichus”という別の筆名を使っているが、これは本名の文字を並べ替えたアナグラム(綴り変え)である。そして、自らを「神の慈悲による、黄金の十字のフラター」(by the Grace of God, frater of the Golden Cross)と名乗っていた。このことにより、マインジヒトがバラ十字会員であったことが分かる。マインジヒトは、『黄金時代における再生』に、自分の紋章を刻印している。この紋章は奇妙なことに、17世紀にローマに作られた、ある門のひとつに刻まれている。この「錬金術の門」と紋章は、現在は青空市場として賑わっているローマのウィットリオ・エマヌエーレ広場(Piazza Vittorio Emanuele)で現在も見ることができる。また、「賢者の石にまつわる黄金の物語」(Golden Treatise Concerning the Philosopher’s Stone)の匿名の作者は、マインジヒトであると考えられている。この物語には、錬金術の寓話の傑作として名高い『パラボラ』(Parabola)が含まれている。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」(No.127)の記事のひとつです。

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