バラ十字会

非宗教・非営利団体であるバラ十字会は、
全世界の87ヵ国に拠点を有し、
23ヵ国語で通信講座の教材をご提供しています。
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宣言書(manifesto)

 

第3部

 人類と宇宙の関係は、相互依存に基づいていると私たちは考えています。人は地球の子どもであり、そして地球は宇宙の子どもです。したがって、人は宇宙の子どもなのです。人間の肉体を構成している原子は、自然界で生じ、〈宇宙〉を構成しているものと同じものです。このことから、天体物理学者は「人は星々の子どもである」と言っています。人は宇宙の恩恵を受けていますが、宇宙もまた人間に多くを負っているということ、もちろんその存在自体にではなく、存在の理由に対する義務を負っているということにも注目しなければなりません。たとえば、もし人間が宇宙をじっくりと見つめることができないとしたら、宇宙はどんなものになってしまうのでしょうか。もし人間の意識が宇宙のことを理解できないとしたら、もし人間のソウルが、宇宙の素晴らしさをこの世界に映し出すことができないとしたらどうでしょうか。宇宙と人間はお互いを知るために、もっと言えば受け入れるために、お互いを必要としています。このことは私たちにかの有名な格言を思い起こさせます。「汝、自身を知れ。そうすれば汝は、宇宙と神々を知るであろう。」

 それでもなお、この宇宙が創造されたのは人間のためであると考えるべきではありません。私たちバラ十字会は、人間を〈創造主/神〉の計画の中心であると考えてはいません。そうではなく、人間に関心を寄せているのは人間そのものです。私たちの見解では、地球上に人間が存在していることは、単なる偶然の結果ではありません。むしろそれは、一般には〈創造主〉あるいは〈神〉と呼ばれている〈普遍的知性〉に由来する意思の結果です。〈創造主/神〉は、超越的であるため知覚することも理解することもできないものですが、〈創造主/神〉が〈創造〉を通して表現しているさまざまな法則はそうではありません。さきほど述べたように、これらの法則を学習し、自分自身の物質的な幸せや精神的な幸せのためにそれを応用することは、義務であるというほどではないとしても、そうする能力が人には備わっています。さまざまな法則を学習し、応用することに、自分自身の存在理由があるだけでなく、そこには幸せもまた存在すると私たちは考えています。

 人間と宇宙との関係では、地球以外のどこかに、生命が存在するのではないかという疑問が生じます。地球外の生命は確かに存在していると私たちは考えています。宇宙にはおよそ千億の銀河があり、それぞれの銀河にはおよそ千億の恒星があります。ですから、宇宙にはおそらく、私たちの太陽系とよく似た無数に多くの太陽系が存在しているものと思われます。そう考えると、私たちの惑星にだけ生き物が住んでいると考えることは、一種の自己中心主義であり、不合理な考え方であると思えます。他の世界に生きているさまざまな生命の中には、おそらく地球上の生命より進化しているものもあれば、それほど進化していないものもあるでしょう。しかし、どの生命もみな、同じ〈創造主/神〉の計画の一部であり、〈宇宙の進化〉に関与しています。地球外の生命が人間と接触できるのかどうかについては、いずれはそうなるだろうと私たちは考えています。しかしこれを待つことに多くの時間を浪費する必要はありません。私たちには、他に優先すべきことがあるからです。いずれにせよ、地球外生命と接触する日はいずれ訪れるでしょう。そしてそれは前例のないできごととなるでしょう。そのとき、まさに人類の歴史は、〈普遍的な宇宙の生命〉の歴史と融合することになるでしょう。

後書き
EPILOGUE

親愛なる読者のみなさん、

 以上が、この宣言書により、私たちがみなさんにお伝えしたかったことです。もしかしたら、この宣言書の内容は不安をあおりすぎるものに思われたかもしれません。しかし、バラ十字会の哲学に基づいて、私たちは理想主義者であり、同時に楽観主義者でもあることをみなさんに述べておきたいと思いますつまり私たちは、人類を信頼しており、その運命を信頼しているのです。科学やテクノロジー、建築や芸術、文学やその他のあらゆる分野で、人間が作り出してきた、非常に役に立つ実用品や美しい作品を思い起こしてみるとき、そして、驚きや同情や愛などを感じたり、表現したりすることができるというとてもすばらしい、人間の洗練された感情について考えるとき、人間は本来神聖なものであること、そして、より偉大な善に向って、自分自身を乗り越えていく能力があることを私たちは疑うことはできません。そのように考えると、もしかすると非現実的な理想主義者だと思われてしまうかもしれませんが、平和で調和が保たれ、しかも友愛に満ちた星に地球を変えていく力を人類が持っていると私たちは信じています。そして議論の余地なく、それは人類の今後の生き方にかかっているのです。

 現在の世界の状況は望みがないわけではありませんが、非常に憂える状態です。私たちが最も心配しているのは、人類の状況というよりも、私たちの惑星の状態です。人間の精神の深奥の進歩ということを考えると、時間は全く重要ではないと思っています。人間のソウルは不死であり、精神の深奥の進歩をなし遂げるためには、十分に長い永遠とも言える時間があるからです。しかし一方で地球は、少なくとも人類のための生存環境としては、今まさに危機に瀕しています。地球にとっての時間は尽きつつあり、21世紀には地球の保護が絶対に必要であると私たちは考えています。その目的のためにこそ、政治、経済、科学、テクノロジーそして他のすべての人間活動の分野で、人類は努力を結集しなくてはなりません。自然界のさまざまな法則、より広い意味では〈創造主/神〉の法則と調和して生きることによってだけ、人間は幸せを見出すことができるということを理解するのは、本当にそんなに難しいことなのでしょうか。また人間は、私利私欲をより純粋で気高いものに変えていく能力を持っていると考えることはそんなに不合理なことなのでしょうか。いずれにしても、もし人間が物質主義を追求し続ければ、最も暗い予言が実現し、誰一人として逃れられなくなります。

 人それぞれの政治的観念や宗教的信念や哲学的確信がどんなものであろうと、それはたいした問題ではありません。どんな形であれ、不和分裂をしている時間はもはやありません。協調の時が、今や熟しています。すなわち人類全体に共通する善へ尽くすために、多少の相違があっても、人類は今ひとつにならなければならないのです。ですから、私たちの友愛組織には、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒、仏教徒、ヒンズー教徒の方々もいますし、精霊信仰の方も、宗教を持たない方も、不可知論者の方もいます。また、あらゆる社会的階級に属する人がいますし、よく知られているさまざまな政治的運動を代表している人も含まれています。バラ十字会では、男性も女性も完全に同じ地位にあり、それぞれの会員には同じ権利が与えられています。ひとりひとりに相違がある中での協調が、私たちの理想と〈エグレゴア〉(精神的な集合的意識)に力を与えてきました。これは、私たちが最も大事に育んできた美徳が「寛容」であること、言い換えれば「ひとりひとりが異なっているという権利」であるという事実の反映です。このことで、私たちは自分たちを賢人とは呼びません。というのも知恵は他の多くの徳を包含しているからです。むしろ、私たちは自身を哲学者(philosopher)、その英語の本来の意味で「知恵を愛する人」であると考えています

 この宣言書「バラ十字友愛組織の姿勢」を封印し、そこに私たちの〈友愛組織〉の印を押す前に、プラトンの言った理想国家としての「ユートピア」と同様の意味で、「バラ十字的ユートピア」と呼ぶことのできる私たちの願いを下記に表明し、この宣言書を終えることにします。

バラ十字のしるし
私たちはいつの日か、人類のより素晴らしい善のために、この〈ユートピア〉が実現することを、すべての人々の善意に訴えていきます。おそらくそのすべてが実現する日は来ないでしょう。しかし、もしすべての人がこの理想を大切にすることに努め、それにしたがって行動するならば、世界はそのときに、少なくとも、今より良い世界へと変わることができます

バラ十字的ユートピア
ROSICRUCIAN UTOPIA

すべての人の〈創造主/神〉、すべての生命の〈創造主/神〉よ、
人類の未来に私たちは次のような夢を見ている。

◆ 政治家は、心の底からヒューマニズムの上に立ち、人類に共通する善に尽くすために努力している。

◆ 経済の専門家は洞察力を持って、すべての人の利益のために、国家の財政を管理している。

◆ 科学者は精神的な面を大事にし、〈自然の書〉の中にインスピレーションを求めている。

◆ 芸術家はインスピレーションにあふれ、作品の中に〈創造主/神〉の計画の美と純粋さを表現している。

◆ 医師は同胞への愛を動機として、ソウルと肉体の両方を治療している。

◆ すべての人々が幸せに人生を送るために必要なものを持ち、苦痛と貧困は消滅している。

◆ 仕事は骨の折れる作業ではなく、成長と幸せの源とみなされている。

◆ 崇拝されるために造られた建造物の中でも、自然は最も美しい建造物であると考えられている。そして動物は、進化の道の途上にある私たちの兄弟と考えられている。

◆ 世界政府が存在しており、すべての国家の指導者によって構成されていて、すべての人類の利益のために働いている。

◆ あらゆる人の心の深奥に存在する尊さを敬うことが最高の規範、生き方とみなされ、その生き方は世界共通の宗教から生じている。その宗教は〈創造主/神〉への信仰に基づくというよりは、むしろ神聖な法則に関する知識に基づいている。

◆ 人間関係は愛、友情、友愛に基づいている。そのために全世界は、平安と調和のうちに保たれている。


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