神秘学を科学する　第１部

Scientific Mysticism Part 1

ウィリアム・ハンド

By William Hand

第２章　量子の結婚

The Quantum Marriage

　このタイトルの講演は、2000年６月に行ったもので、そこで私は、最新の量子物理学の主な発見と原理をご説明して、次に、それらをバラ十字会で教えられている内容に当てはめることが可能であるかを調べました。

　量子論は、いわゆる古典物理学の論理構造をひっくり返すような奇妙なパラドックスを私たちに突きつけます。原子の内部のレベルでは、個々の粒子はお互いの存在を意識しているかのように思えます。そして、ハイゼンベルグ（Heisenberg）の「不確定性原理」（uncertainty principle）によれば、自然をどこまで正確に観測できるかには限界があります。しかしながら、量子論は、驚くほど正確であり、物理学と化学の両方で広く利用されています。量子物理学の発展は、20世紀の極めて有能な、かなりの数の科学者によるものです。そして、このような短い記事では、この素晴らしい知的体系を築く際に生じた、科学的な議論や絡み合っている関連の全てについて書くことは不可能です。しかしながら、重要な要点はご紹介します。そして、あなたがさらに、この話題について研究したいと思われましたら、記事末にある参考文献リストが良い出発点となることと思います。

　量子物理学が扱っているのは、小さなスケールの物理現象であり、その大きさは、原子内部の電子や、可視光、エックス線、ガンマ線のような電磁波の輻射の程度です。面白いことに、私たちはこれらの現象のすべてが、バラ十字会員向けの論文教本に含められている宇宙振動の図に記載されているのを見ることができます。光よりも小さい振動数をもつ全ての現象は、古典物理学で理解できる仕方でふるまいます。しかし、光と同じかそれより大きい振動数を持つ現象は、かなり奇妙な量子力学的な仕方でふるまいます。もちろん、この区分には暗に、心霊投射やソウル精髄という現象も含まれています。したがって、神秘学を学ぶ人に、量子物理学が密接に関連していることが分かります。

　アイザック・ニュートン卿（Sir Isaac Newton）の与えた影響から、18世紀のほとんどの物理学者は、光は素粒子、すなわち微細な粒子から構成されていると考えていました。しかしながら1800年頃から、「ヤングの２重スリット（Young's slits）」の実験などから、光には波動としての性質もあるということを示す証拠が蓄積されて行きました。さらに19世紀の終わりまでに、ほとんどの科学者が受け入れた考えは、光や他の放射が波からなり、石が池に落とされた後に見ることのできるさざ波に極めて良く似ているということでした。しかし1900年に、ドイツ人の物理学者マックス・プランクは、光も含む放射エネルギーは、連続的に放射されるのではなく、量子と呼ばれる不連続なパケット、つまりかたまりとして放射されるという理論を発展させました。これが量子物理学の夜明けとなりました。それどころか、1905年にアルバート・アインシュタインは、光電効果を説明するために、光が光子と呼ばれる微粒子からなることを示しました。しかし、光は波のようにもふるまいます。それでは、これをどのように考えたら良いのでしょうか？　光子とはいったい何なのでしょうか？　

　この事態は、解決が困難な状況の始まりとなり、1913年のニールス・ボーアの原子理論によって、状況はいっそう複雑なものになりました。その理論が示していたのは、原子核の周りを回る電子は、エネルギーがやりとりされる際に、ひとつの軌道から別の軌道に不連続にジャンプをするように見えるということを示していました。その結果、連続性という古典的な見解が破られたのでした。その後すぐに、エックス線が粒子と波動の両方の性質を示すことが発見され、1924年にはフランス人、ルイ・ヴィクトル・ド・ブロイ（Louis Victor de Broglie）が、物質そのものも波動と粒子の両方の性質を持つと主張しました。このことは、すぐに実験的に確認されました。そして今日では、さまざまな実験により、物質のあらゆる構成要素には、波動性と粒子性という２つの性質があることが立証されています。これらの性質は、どのように観測するかに依存しています。この18文字が、量子力学の基本的な主張を理解するための鍵です。

　※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に４回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に４回入手することができます。