神秘学を科学する 第5部
Scientific Mysticism Part 5
ウィリアム・ハンド
By William Hand
第4章 意識の拡大
Consciousness Expands
人類の歴史のある時点で、人は自己意識(Self Consciousness)を獲得しました。自己意識がどのように生まれたのかを探るために、〈意識〉の量子モデルを考えてみましょう。まず、人間が何兆個もの細胞から構成されているのを思い浮かべます。そして、それぞれの細胞には、特定の機能を果たすことができるある種の受動的な意識があり、すべての細胞がひとつの集団、完全なシステムとして一緒に機能しています。このシステムの粒子的側面、「R」の側面が、物を知覚するという受動的な意識を構成しているものにあたります。たとえば、鏡をのぞき込んで映っている物体の像を見る場合はこの状況にあたります。一方、私たち人間は、ご存じのように自己を鏡の中に見ることができ、この状況は、量子力学的な波動、すなわち意識の「Q」という側面により起こっています。この波動は、「ひも」の振動により生じます。鏡の中を見るという行為が原因となり、受動的な意識を持つ脳の一部がイメージを記録します。
次に、情報とエネルギーの交換が起こり、鏡に映っている像の振動と、鏡の前に座っている“もの”(鏡を見ている本人)の間に干渉(coherence)が生じます。すると量子波は収縮し、鏡をのぞき込んでいる私たちの現実(「R」)が得られます。ごく短い時間に、この干渉、あるいは“命令”(order)が、私たちの体の一部によって知覚されます。私たちはこの命令に反応し、そして人間というシステム全体がこの相互作用に気づき、私たちは鏡の中に見えるものを知覚することになります。私たちは自分自身が鏡の前に座っていることが分りますが、それは私たちが、個々の細胞、つまり「ひも」の心をまとめ上げて、ひとつの心として作用させて、全体的な状況を把握することができるためです。つまり、私たちは、知覚しようとする対象を“選択する”ことができます。
選択するという行為は、〈意識〉の能動的な部分にあたります。たとえば、瞑想の状態に入り、自分が誰で今どこにいるのかという意識から離れて、何か他のことを意識することを選択することができます。その際に行われているのは、注意を集中して、「ひも」の心をひとつの心にまとめるということです。人間は、細胞からなる非常に複雑な構造なので、このようなことがとても上手にできるのです。特に脳の構造の複雑さのおかげで、私たちは「受動的な意識」が受け取った情報を総合的に解釈して、その意味を理解することができます。このことは、植物やほとんどの動物には、おそらくできません。つまり、このような生物は、人間と比べて構造が単純なため、自己と世界という包括的な状況を理解することも、それに思い至ることさえできません。
人間の発達が進み、集団社会を形成するようになったときに、「集団意識」(Group Consciousness)が現れたと考えられます。〈意識〉の「Q」の側面を通して、人間は自分自身を知覚するようになっただけでなく、すべての人が結びついているという形で他の人を知覚するようになったのでしょう。やがて、より先の段階へと進むことができる人々が現れ、「宇宙意識」(Cosmic Consciousness)として一般に知られている種類の意識に到達しました。「宇宙意識」に到達した人は、万物が一体となっていることと、その全体の中での自身の役割を知覚することができます。「宇宙意識」にあるときには、その人の中では量子力学的な波動が収縮し、時間は存在することを止(や)めます。そして、一体である宇宙の、粒子としての側面が実現します。つまり、宇宙も自己も、すべてがひとつであるという経験が得られます。能動的な意識の夜明けとともに、〈意識〉には欠けたところがなくなり、意識自体を知覚するようになりました。つまり、ひとつがふたつになり、ふたつがひとつになったのです。意識の能動的な部分は、変化のための力となり、そして量子物理学者たちが20世紀に想定したように、あらゆる現実世界の背後にある最も基本的な力となったのです。
1.「R」は、意識が活動することで成立する現実を表すのに使用されます。(第1部を参照してください)
2.「Q」は、あらゆる可能性である、量子学的な波動を表すのに使用されます。(同上)
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