神秘学を科学する 第6部
Scientific Mysticism Part 6
ウィリアム・ハンド
By William Hand
第4章 壮大な構図
The Big Picture
ひも理論は、1995年まで、少々混乱の中にありました。つまり、ただひとつの理論ではなく、いくつかの競合する理論があったのです。いずれの理論にも、多次元という側面が含まれていましたが、それぞれの理論は他と少しずつ異なっていました。ひも理論が正しければ、宇宙に働く法則はたったひとつしか存在することができないはずなので、理論がいくつかあるという状況は、それらの理論が不完全なことを示していました。そして、1995年に、優秀な科学者エド・ウィッテンが、新しい扉を開きました。彼は、目に見えない次元のうちのひとつが、極めて大きい(宇宙よりも大きい)とすれば、これらの理論の見かけ上の違いはすべてなくなり、ただ一つの理論になることを数学的に立証したのです。そう、ただひとつのひも理論です。
次元という概念を第3部で議論したときに、たとえば2つの次元しかない世界で生きている人には、高さというもう一つの次元を想像することは難しいということをご紹介しました。三次元に存在するものは、二次元では全く異なる形で現れることになります。たとえば、二次元の世界に近づく球体は、二次元の世界の住民にとっては、単に直径が大きくなっていく平たい円として見えるでしょう。そこから類推すると、10次元の宇宙にいるときには、非常に大きな11個目の次元で起きていることは、ほんの一部分しか見ることができないことになります。しかしながら、一次元が追加された高次の構造があり、無数にある宇宙、すなわち「膜」(brane、またはmembrane)を包み込んでいて、私たちの宇宙はこの構造の一部であるという考え方を、多くの科学者が現在模索しているところです。この分野についてもっとお読みになりたければ、スティーブン・W・ホーキングの「ホーキング、未来を語る」(The Universe in a Nutshell)をお勧めします(参考文献を参照してください)。
私たちがこの考え方を取り入れるならば、「根源的生命力」の特性である〈意識〉は、宇宙のすべてを超えることになります。私はそれを否定する理由はないと考えています。さらに、この〈意識〉は、無数にある宇宙のすべてで同一の、唯一の〈意識〉であることになります。これは宇宙の意識、すなわち普遍的な意識という概念をはるかに超えた概念です。もしかするとここで私たちが議論しているのは、神の意識なのかもしれません。存在するものすべての原因となる高次の力が存在する可能性を、今では多くの科学者が認めています。そして私たちも、現在の科学知識を使っていては、これ以上進むことができない地点にたどり着いたのです。さらに高次の構造を考えることができるかもしれません。しかし、ここではそれをご説明することはせず、みなさんそれぞれに瞑想していただくようにお願いします。
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。