神秘学を科学する 第8部
Scientific Mysticism Part 8
ウィリアム・ハンド
By William Hand
第1章 ソウルとひも理論
前回の第7部では、ソウル人格を構成しているのは何であるかということを、科学的な観点から推測しました。今回は、ひとつの人生の終わりから、次の人生の始まりまでの旅を通して、ソウル人格(soul personality)についてさらに詳しく考察していくことにしましょう。当然、その過程ではカルマと転生という概念について検討していくことになります。この記事で扱う科学的仮説は、世界中の何千人もの人々の経験や、再現することが可能な数多くの科学の実験や、バラ十字会で説明されている様々な法則をもとに作られています。しかし、読者のみなさん、この証言を受け入れることも拒絶することも、もちろん皆さんの自由です。なお、この記事で例として挙げたお名前は完全に架空のものであることをお断りしておきます。
サイモン・ベントレーは、とても素晴らしく、また満足のいく人生を送ってきましたが、84歳となり、終わりのときが近づいていました。ちょうど1年前に不治の病に冒され、病は次第に彼の体の活力を奪っていきました。「根源的生命力」(Vital Life Force)の電磁的な部分は、この1ヵ月で特に弱まっており、今ではベッドから出られないほどにまで、サイモンは衰えてしまっていました。
その日曜日の朝、ベッドの周りにはサイモンの子供たちが腰掛けており、医師は彼の死がすぐそこまで迫っていると語りかけました。サイモンの根源的生命力の物質的な部分は、次第に消滅しつつあり、彼は何度も意識を失ったり、取り戻したりしていました。時おり体がとても軽いように感じ、彼のソウルを体に結び付けていた引力もまた弱まっていることが分かるようになりました。ある瞬間に彼の意識は変化し、別な世界のようなもの、あるいは別な次元のようなものを垣間(かい ま)見ました。そのときの彼には肉体があるという感覚はなく、ただ思考や思念だけがあるという感覚があったのです。
自分自身の別な部分が存在することが、彼には客観的に分かっていました。その大部分は目に見えない次元、すなわち前回ご説明したp-ブレーンに存在する「ひも」でできていました。ゆっくりと、様々な姿が形を取り始め、他の人々がそこにいることが彼には分かりました。ある人が彼の“目”を捕らえました。それは5年前になくなった彼の妻でした。そこでは、彼女は若々しく、輝くほどの美しさでした。妻の「目」には涙があふれていましたが、それは言葉では言い尽くせないほどの喜びの涙でした。ベッドで呼びかけられて目を開けたとき、サイモンは幸せそうな様子で、実際に微笑んでいました。「大丈夫、心配ないさ」とサイモンは子供たちに話しかけました。そして、その言葉と同時に最後の息を吐き出し、亡くなったのでした。
彼の脳は活動を終え、80年以上もの間、彼の肉体を守り続けてきた根源的生命力の物質的な部分は、結合力を失い始めました。そして、彼の体はそれを構成していた化学的な要素へと戻りつつあります。このプロセスは、何年もかけてお墓の中で完了することになるでしょう。しかし、いまやサイモンには新しい“体”があり、もはや、ベッドの上で亡くなったサイモン・ベントレーではありません。彼は単にサイモンでした。つまり今は、別の次元で、ある体とともに生きているソウルであり、その体は、その次元に存在する「ひも」でできています。彼はこの新しい環境と、まだ生きているどころか、それ以上であるという事実を徐々に受け入れるようになりました。
私たちが通常知っているこの三次元の世界の振動と比べると、この次元でのエネルギーの振動数は非常に大きいため、当然のことながらそのエネルギーは信じられないほど大きいものでした。しばらくするとサイモンは、自分が記憶を持っていること、それも、はるか昔にまで及ぶ記憶があることに気がつきました。彼が話したり、行ったり、考えたりしたことさえすべて、ひもの振動のパターンとして記憶されていました。彼の物質的な脳の中にあった思考は、「重力子」(graviton)の作用によって、目に見えない次元に記録されてきました。彼の願いや望みも同様です。そして今や、それらの記憶すべてを思い出すことができました。その記憶は彼の一部であり、彼もまたその記憶の一部だったので、以前よりもずっと、記憶が身近に感じられました。彼は波動のようなものを感じました。瞬時に、行きたいところに彼を連れて行ってくれる、純粋なエネルギーの波動です。もしかしたら、量子物理学は結局のところ正しかったのでしょうか?
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。