神秘学を科学する 第9部 ~生命と宇宙と万物~
Scientific Mysticism Part9 - Life, the Universe and Everything
ウィリアム・ハンド
By William Hand
第1章 万物理論
Theory of Everything
今回で、この「神秘学を科学する」は最終回となります。このシリーズは、3回ずつの3部構成となっていました。第1部から第3部では、量子物理学とシステム理論、そしてひも理論を構成している基本的概念を取り扱いました。これらの理論分野が提供してくれる科学的なツールを基礎にして、次の第4部から第6部では超感覚的知覚(ESP)、〈意識〉、根源的生命力(Vital Life Force)という、神秘学にまつわるテーマを議論しました。そして第7部では、ソウル人格について検討し、第8部ではカルマと転生の法則と、死と誕生の間の期間について、そして、これらの考え方と科学の間にある関連について検討してきました。最終回となる今回は、〈創造主/神〉の概念、〈宇宙意識〉、「すべてのものを説明するひとつの理論」(Theory of Everything:万物の理論)を検討します。そして、意識に関する科学についての私の考えをお伝えしたいと思います。特に、意識が死後も生き続けるのか、宇宙と自分自身を私たちが理解するために、このことが何を意味しているのかについて考え、このシリーズを締めくくりたいと思います。
私もそのひとりですが、大学で学んだ方の中には、生命や宇宙や、他のあらゆる事柄について、夜更けまで議論を交わしたことが、少なくとも一度はあったことを思い出される方もいらっしゃることでしょう。そのような議論は、「神は存在するのか」、「なぜ私たちは生まれてきたのか」という疑問へと必然的に行き着くものです。しかし私の知る限り、いまだかつて、同意を得ることのできる決定的な答えが出されたことは一度もありません。
今日の理論物理学者たちも、同様の疑問を問い続けていて、「すべてのものを説明するひとつの理論」(Theory of Everything)という科学における、いわゆる「聖なる究極の目標」(holy grail:聖杯)を追い求めています。「すべてのものを説明するひとつの理論」のことをこの記事ではこれから「万物理論」と呼ぶことにしましょう。もしもそのような理論が存在するならば、私たちがすでに知っているあらゆる物理的な現象を完璧に説明することができると同時に、そのような現象どうしの関連性をも解き明かすことができます。また、自然界に存在する基本的な相互作用についての理論を統一し、ただ一通りの理論で説明することができるようになります。通常、自然界の基本的な相互作用には、4つの種類があると考えられています。それは、重力、強い核力、弱い核力、電磁力の4つです。
そのうちのひとつ、弱い核力によって、ある種類の素粒子が別の種類に変換されることがあります。したがって万物理論は、この4つの力だけでなく、さまざまな種類の素粒子についても、深い理解をきっと提供してくれることでしょう。
「すべてのものを説明するひとつの理論
」という概念は、ピエール=シモン・
ラプラス(1749-1827 年)の著作で
有名になった因果律についての古典的
な考え方に基づいている。
フェトー夫人の描いた死後に公表された
肖像画(1842 年)
20世紀から今に至るまで、いくつもの万物理論が理論物理学者たちによって提案されてきました。しかしいまだに、実験による精密な検証に耐えることができた理論はひとつもありません。万物理論を構築するにあたっての最大の問題は、現在受け入れられている、量子力学と一般相対性理論が、宇宙を記述するための、根本的に異なる方法を提案しているということです。その結果、この2つの理論を直接組み合わせ、実験的に検証が可能な数量を求めようとすると、安定した結果が得られないという問題にすぐにぶつかってしまいます。そのため、万物理論は発見されることはないのではないかと、多くの物理学者は考えています。
「すべてのものを説明するひとつの理論」という概念は、因果律についての古典的な考え方に基づいています。この考え方は、ピエール=シモン・ラプラス(1749-1827年)が1814年に書いた評論「確率についての哲学」(philosophique sur les probabilities)で提唱し有名になりました。ラプラスは下記のように述べています。
「ある特定の瞬間における、自然界を動かしているすべての力と、自然界を構成しているすべての要素のすべての位置を、もしある知性が知ることができ、かつその知性が、それらのデータを解析できるほど十分に強力であるとすれば、宇宙の極めて巨大な天体の運動から、ごく微小な原子の運動まで、その知性はひとつの数式として把握することができるであろう。それゆえに、そのような知性にとって不確実なことは何もなくなり、その目には未来も、過去とまったく同様に全て見えていることになるであろう。」
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