2012年7月アーカイブ

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今回は、6歳になる少年の小さな冒険と、

ある出会いの話をお届けしたく思います。


お楽しみいただければ心より嬉しく思います。

 


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ビスケットとレモネード

     ~  ディーニ・ジェイコブ  ~

 

6歳になるエリックは、おませな少年で、

人生で一番重要なことを、すでに知っていました。


神さまに会いたい! 

神さまを見つける旅は長くなるだろうと知ってはいましたが、

エリックはめげることもなく、弁当箱に食べものを詰めて、

レモネードを何本か見つけ出してきて、

その全部を通学用の鞄の中に入れました。


そして、自信たっぷりに玄関を出て、

神さまに会うための長い旅を始めました。


エリックには知るよしもありませんでしたが、

彼が考えていたよりも、旅は、ずっと短いものになるのでした。


通りを3つ過ぎ、エリックは公園にたどり着きました。


そこのベンチには、老人が座っていて、

足もとにいる数羽の鳩たちにえさをあげていました。


エリックは、生き物の中では鳥が一番好きでしたし、

それどころか、鳥たちが耳を傾けてくれるときには、

いつでも歌を歌ってあげるのでした。


彼はベンチの端によじ登ると、遠慮がちに腰かけて、

足をぶらぶらと揺らしながら、

地面にまかれた豆をついばむ鳥たちを見て、楽しんでいました。


すべてが穏やかで、調和に満ちていました。


鳥たちが空腹のおなかにえさを詰め込んでいるのを見ていて、


やっとエリックも、食べもののことを思い出しました。


それに、考えてみれば、おやつを食べるのにちょうど良い時間でした。


弁当箱を開けて、一枚目のビスケットにかじりつこうとしたとき、

エリックは、老人がとてもお腹を空かせた様子で

自分を見ていることに気づきました。


そこで、何のためらいもなくビスケットを取り出して、

老人に差し出しました。


老人は感謝を表すと真剣なまなざしで受け取り、

ビスケットを食べながら大きな笑顔を見せました。


老人の顔に浮かんだ微笑みがとても素敵だったので、

エリックはもう一度その笑顔を見たいと思って、

レモネードを一本、老人に差し出しました。


老人は再びエリックに微笑みかけると、

その贈り物を感謝して受け取りました。


エリックは喜びに満たされました!

それからふたりは1時間ほど座って、

神さまに会いに行く旅のためのエリックの食べものを分かち合いました。


エリックは話しかけず、老人も黙ったままで、

ただ、ベンチに腰かけて、互いに時々、

気恥ずかしそうに微笑み合うのでした。


食べものはだんだんと少なくなり、

鳩も餌を与えてくれる人のいる他のベンチのほうへ行ってしまいました。


まだ午後の半ばでしたが、エリックはお茶の時間までには

家に戻らなければならないことがわかっていました。


そこでエリックは立ち上がると、2、3歩後ろ向きに歩いてから、

少しだけ手を振って、老人に挨拶をして、

くるりと向きを変えて走り出しました。


ところが、突然エリックは立ち止まって振り返ると、

老人のもとに一直線に走って戻り、その腕に飛び込んだのでした。


やさしい気持ちがふたりの間にあふれて、

長いこと互いに抱き合っていました。


けれども、ママがすぐにも心配し始めることが分かっていたので、

エリックは、今度こそ本当に帰る時間だと考えました。


そこで、元気に手を振って、2、3歩後ずさりながら、

はにかんだ声でさようならを言って、真っ直ぐに走り去っていきました。


老人はエリックに、さっきよりもっと大きく微笑むと、

頬に涙を伝わらせながら静かにさようならとその唇を震わせました。


エリックが家のドアを開けた時、

母親は、エリックの顔に浮かぶ喜びを見て驚きました。


エリックは、そばにいて、いつでも楽しそうにしていましたが、

これまで一度も、これほど幸せそうなエリックを見たことは

ありませんでした。


「午後ずっと、どこへ行っていたの?

ちょっと心配し始めていたのよ。

何か、うれしいことがあったの?」


エリックは顔を輝かせながら答えました。


「神さまと一緒にお昼を食べたよ。」


そして、母親が口をはさむ前に続けました。


「神さまは、鳥にとってもやさしくて、すっごく大きな笑顔なんだ。

ママ、僕、神さまが大好きだよ。」 


一方、通りを何本か隔てたところに住んでいる老人は、

結婚して60年になる愛妻のエルザとともに暮らしている、

小さなアパートに戻りました。


エルザはすぐに、何かとても重大なことが起こったのに気づき、

彼の腕を優しく撫でると、それを話してくれるかどうかと

尋ねました。


「ちょうど今、話そうと思っていたところだよ!」


老人はそう返事をすると、頬に涙を伝わらせながら、

公園のベンチで起こったことを詳しく話し始めました。


「分かるだろ、今日、私は神に、本当に出会ったのだと思う......。

神は、考えていたよりも、はるかに幼かった。」


ふれあいや微笑み、やさしい言葉、

耳を傾けること、素直な敬意、

ちょっとした気づかい。

私たちは、あまりにもしばしば、こういったことの力を、

みくびってしまいます。


そのすべてに、人生をまったく変えてしまう力があります。


何らかの理由があって、しばらくの間であったり、

あるいは一生の間であったりしますが、

私たちが、人生で出会う人たちがいます。


そんな全ての人々を、同じように、包みこむように受け入れましょう!

 

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